研修医になると、国試の知識だけじゃ通用しない。
検査だって自分でオーダーしなきゃならないし、基本的な輸液ひとつとっても誰にどれくらいどうやってすればいいのかも分からない。
研修医になりたての頃ってみんなそう。
そこで、分野関係なく、最低限これ持っといたほうがいいよって本を厳選してみました。
自分が研修医だった時も役に立った本だし、これから研修医になる人もチェックしておいたらいいと思う。
1冊目:『研修医になったら必ず読んでください』
自分が国試に合格した後、仕事が始まる前に何か読んでおこうと手にした本。「必ず」と書いていたから読んでみたけど…。
良くも悪くも研修医としての心構えが学べる本、そう心構えだけが。
後半から、診察の基本とコツ、基本的手技(CV、動脈穿刺、気管挿管など)、抗生剤の選択と続くが、臨床をする前の段階で読み進めるのは正直しんどかった。
しばらく研修医をやってから読み返すと、いろいろと発見があるんだけど、いずれにしても基本的な内容ばかり。
第2章「研修医の臨床力を上げます」の後半部分は、なぜそれを取り上げた?と思うくらい内容に偏りがあって、他にもっともっとわかりやすい本があるため、流し読みでOK。
本の厚さにしか貢献していない。
それを差し引いても、第1章「研修医に必要な心構えです」の部分は一読の価値あり。
就職前のイメージトレーニングがてら、導入としての1冊に最適。
第3章「研修医に必須のプレゼン術を教えます」の部分は、おまけ程度であるが、他にあまり良書がないので、少しは役に立つと思う。
総合評価:★★★★☆(星4つ)
2冊目:『内科レジデントの鉄則』
研修が始まったら、たとえ医者1日目でも周りにとっては立派なお医者さん。
患者さんやその家族のみならず、看護師や薬剤師、検査技師などからも報告相談され、指示を求められる。
ちょっと待ってくれー、医者だけどまだ国試の知識くらいしかないんじゃー!!と叫びたくなることもしばしば。
「◯◯さん、熱でてますけどどうしますか?」
「△△さん、サチュレーション(SpO2)下がってます!」
「☓☓さん、嘔吐しました」
このような、臨床医として当然対応できなければならない状況や病態に対してどうすれば良いか、実践的に書かれているのがこの本。
もう指導医についてまわる実習は終わり。
冷静に状況を見極め、しっかり指示の出せるカッコイイ研修医になるための方法が、この本には詰まっている。
研修医が最初に悩む輸液や栄養、血ガスの見方、レントゲンの読影についても書かれており、非常に内容が充実している。
まずはこの本をマスターすることを目標にしてもいいかも。
新版でたよ。
総合評価:★★★★★(星5つ)
3冊目:『診察エッセンシャルズ』
何でも知ってて仕事の速い、よくできる指導医の白衣ポケットに唯一入っていたのがこの本。
初期研修を修了するためには、研修先にもよるが、少なくとも決められた30項目の症例レポートが必要だ。
担当患者の中から、「不眠」「浮腫」「リンパ節腫脹」などの項目に見合う症例を選択し、レポートを書く。
その核心部分は、その症状に対してどういう鑑別をし、何に注意してその治療を選択したか、ということ。
実は、この本。そんなレポート作成に最適なのだ。
この本には、症状別に診察すべきことや鑑別が分かりやすく載っているのだが、その症状がレポートの項目と見事に一致!
もちろん、皆さんはそんな邪なこと考えずに臨床に活用すること。
総合評価:★★★★★(星5つ)
4冊目:『もう困らない救急・当直』
一番、医者してるなーって思う瞬間、救急対応。
医学部ではあまり勉強してこなかった、
症状きいて → 鑑別考えて → 検査して → 確定診断して → 治療する。
夜中のくそ眠い時間に、誰にも頼れないプレッシャーと戦いながら、このプロセスを繰り返す。
大変です、本当に。
でもこの本を持っていたら心強い。
救急に来る症状別に、何を考え、何をしたらいいか、必要最小限が書いてあり、しかもカラーで見やすく読みやすい。
欠点は、ポケットに入らないことと、本当に頻度の高い症状しか載ってないこと。
あくまでもマニュアル本で、深く勉強するには全然足りないけど、救急当直にはこれくらいがちょうどいい。
救急対応する前に通読するべき。すごく好きな一冊。
ちなみに、筆者が読んだのは旧版のver. 2。
ver. 3が出版され、内容が増えたかわりに見やすさややダウン。書籍を買うと電子版が付いてくるので、持ち運べるようになったけど。
やっぱり見やすさ、検索しやすさ、大事だよなぁ。中古で安く買ってもいいかも。
総合評価:★★★★★(星5つ)
5冊目:『当直医マニュアル』
当直・救急は丸腰では戦えない。
どんなに経験を積んだとしても、マニュアル本は一冊くらい持っていたい。
そこで、白衣ポケットに入る当直本。
これ以外にもたくさん種類があるので、いろいろ見て好みに合うのを選んだら良い。
筆者のまわりは、これを持ってる人が多かった。
総合評価:★★★☆☆(星3つ)
6冊目:『研修医当直御法度』
またまた当直に関する本。
といっても今度は、当直の空いた時間に読むための本。
一字一句理解して学ぶぞ、という意気込みで読んだら、あまりに濃い内容に胃もたれするので、ふーんと思いながら流し読みするのがオススメ。
症例ベースで、問診や診察のポイント、対処の方法、裏技、豆知識まで書いてある。
何回か当直してから読み返すと新たな発見があったりして飽きない。
ベストセラーなのも理解できるが、人によっては文体・構成が好みに合わないかも。
総合評価:★★★★☆(星4つ)
7冊目:『絶対わかる抗菌薬はじめの一歩』
研修医の前に立ちはだかる第一の難関、抗生剤。
臨床ではもちろん、セフェム系、マクロライド系とかではなく商品名で薬を処方するので、違いを覚えるのが大変。
しかも、起因菌の特定と並行して抗生剤の投与をしたりするので使い方が複雑だし、診療科が変わったら使う抗生剤も違うし。
そんな混沌の中に投げ込まれた研修医に一筋の光をあてる一冊。
タイトル通り、はじめの一歩、基礎の基礎。
巷では、わりと箇条書きで書かれている本が人気みたいだけど、色々理解して学ぶならこういう本がいいと個人的には思う。
総合評価:★★★★★(星5つ)
8冊目:『感染症レジデントマニュアル』
感染症と抗生剤に関する本で、こちらは白衣のポケットに入れておく方。
知らない名前の抗生剤がでてきた時、抗生剤を選ぶ時、抗生剤の種類を変更したい時、投与期間を決めたい時、グラム染色した時、などなど臨床のあらゆる場面で活用できる。
欠点は、見づらいこと、ずっと白衣に入れてたらやっぱり邪魔なこと。そして、意識高い系に見られること。
総合評価:★★★★☆(星4つ)
9冊目:『診察と手技がみえる vol.2』
ポリクリ前に買った人が多いと思うが、この本の真価が発揮できるのは研修医になってから。
研修医になったら、朝の採血はもちろん、いろんな場面で手技を行う機会がある。
初めてはみんな上手くないし、数をこなせばこなすほど、どんどん上手になる。
同期の数が多いと、手技のチャンスなんてあまり巡ってこないかもしれない。
せっかくのチャンスに、指導医から「やり方わかる?」と聞かれて、「いや…」なんて答えると、「じゃあ今回は見てて」ってなる。
まわった診療科でこの手技まわってきそうだな、と思ったら、この本でやり方をイメージトレーニングしておくのが、できる研修医。
総合評価:★★★★★(星5つ)
10冊目:国試で大活躍したあなたの一冊
10選って言いながらなんやねんそれ!ってツッコミが聞こえてきそうだが…。
国試の前に詰め込んだよね、知識。
そして忘却曲線知ってるよね?国試から開放された瞬間から、知識がぁ…知識がぁ〜!!
その疾患、名前は知ってるけど、どんな検査で陽性になるんだっけ?治療は何をするんだっけ?
絶対になる、ほぼ確実。
ということで、研修医の手元に置いておきたいとっておきの一冊は、国試で勉強した色々な知識を網羅した一冊。
たくさん書き込んだイヤーノートだったり、レビューブックだったり、ビデオ講座のテキストだったり、自作のノートだったり。
国試の範囲になるということは、頻度が高いもしくは重要な病態や疾患。
研修医でもお目にかかること間違いなし。
その時、各自とっておきの一冊に学んだことを書き足すのをオススメする。
医者になったら大部分の人は、ゆくゆく認定医や専門医をとることになる。試験がある。そのとき役に立つ。
引っ越し前に捨ててしまわないこと。
最後に
医学書はけっこう好みが分かれるもの。
先輩や指導医にオススメを聞いたら、書店などで実際に手にして確かめたほうがいい。
医学書は高価だし、無理して読み進めるほど辛いことはない。
ただ、ベストセラーと呼ばれる本の多くは、好みこそ分かれるけれど、本当に学ぶことが多い本であることは確か。
このサイトでは、医学書のレビューをどんどん書いていく予定。
誰にも媚びる気はないので、かなり辛口になると思われる。
ちなみに、国試の参考書に「みえる派」「STEP派」「できった派」があるとすれば、筆者は俄然「みえる派」。
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